
近年、ドローンの利用は世界中で急速に拡大しており、スウェーデンも例外ではありません。
しかし、ドローンの安全性やプライバシーを守るために、スウェーデンでは2021年1月1日から新しいEU共通のドローン規制が施行されました。
本記事では、スウェーデンのドローン規制について丁寧に解説していきます。
スウェーデンでドローン飛行を行う予定がある方は、是非、最後まで読んでみて下さい。
スウェーデンのドローン規制

スウェーデンでのドローン規制を監督し、実施を担う法的機関は以下の通りです。
・スウェーデン運輸庁(Transportstyrelsen)
-ドローン規制の策定と実施を監督する主要機関
-ドローンのオペレーター登録、ライセンス発行、地理的制限区域の設定を管理
-ドローン試験やライセンスの詳細情報を提供
・欧州航空安全機関(EASA: European Union Aviation Safety Agency)
-EU全体の統一規則を策定し、スウェーデンでも適用される共通基準を提供
-オープン、特定、認証カテゴリーの基準を規定
・LFV(スウェーデン航空管制サービス)
-ドローン飛行に関連する空域管理を担当
-管制区域や危険区域、飛行制限に関する地図を提供
これらの機関は、安全かつ適法なドローン飛行を確保するために連携して働いています。
参考:・スウェーデン運輸庁 ドローン関連ページ
・EASA公式ページ
・LFVドローンマップ
スウェーデンはEASA加盟国
スウェーデンはEASAに加盟しているため、オペレーター登録は共有されます。
例えば、スウェーデンでオペレーター登録を行った場合、EASA加盟国であるドイツではオペレーター登録が不要です。
これは逆パターンも同様で、他のEASA加盟国で登録が完了していればスウェーデンでの登録は免除されます。
EASA加盟国は以下の27ヵ国です。
・EU
・アイスランド
・リヒテンシュタイン
・ノルウェー
・スウェーデン
・スイス
オペレーター登録とドローン登録

スウェーデンのオペレーター登録とドローン登録の概要は以下の通りです。
オペレーター登録の概要
・登録要件
-ドローンまたは模型飛行機を屋外で飛行させる場合に登録が必要
-ドローンの重量が 250g以上 または 80ジュール以上の衝突エネルギー を持つ場合
-カメラや録音装置を搭載している場合(C0クラスの玩具を除く)
・登録条件
-個人の場合、18歳以上
-個人の場合はスウェーデンに居住、団体の場合はスウェーデンに本拠地が必要
・登録手続き
電子サービスでの登録
-電子IDを使用してオンライン登録が可能
-登録には数分かかり、銀行カードまたはSwishで支払い可能
書類での登録
-電子IDが利用できない場合、専用の申請フォームを使用
-書類提出後、手動での処理が行われるため、処理時間が長くなる場合がある
・必要書類
-登録申請書(オンラインフォームまたは紙フォーム)
-個人の場合: 身分証明書または電子ID
-組織の場合: 組織登録証明書、署名者の証明書
・費用
-登録料: 190 SEK(約2,660円)
-年間保管料: 250 SEK(約3,500円)
ドローン登録の概要
スウェーデンではドローン自体の登録は必須ではありませんが、オペレーターIDの表示が義務付けられています。
・ドローンへのラベル貼付
-ドローンには、発行されたオペレーターIDをラベルで貼付する必要あり
-ラベルは、地上で目視可能な位置に配置
-小型ドローンの場合、バッテリー収納部内に配置することも許可
・ラベル表示要件
-ラベルは耐久性があり、読みやすいものであること
-QRコード形式でも可
・登録後の義務
-登録されたオペレーターは、適切な飛行計画とリスク評価を行う責任を負う
-遠隔操縦者が規則に準拠していることを確認
-地域の規制や飛行可能エリア(制限区域、地理的ゾーンなど)を遵守
・登録解除
-ドローンの使用を停止する場合、登録を解除する必要あり
-登録解除は電子サービスまたはメールで申請可能 ※operatorsregistrering.dronare@transportstyrelsen.se
-毎年12月31日までに登録を解除すると、翌年の保管料が請求されない
・注意事項
-スウェーデンのオペレーター登録はEU全体で有効
-EU内の他国で飛行する場合、別途その国の規則を確認する必要あり
-ドローンがCクラス(C0-C4)に該当する場合、それぞれの要件を満たす
参考:オペレーター登録
スウェーデンのオープンカテゴリの飛行ルール

スウェーデンのオープンカテゴリーでは、以下の飛行ルールが適用されます。
一般的な飛行ルール
- 目視範囲: ドローンは常にリモートパイロットの目視可能範囲内で操作すること。
- 最大高度: 地表から120m以内で飛行すること。
- 他人への配慮: 関係者以外の人々を危険にさらさないよう飛行させること。
- 禁止事項: 群衆の上を飛行してはならない(A1カテゴリを除く短時間の許可は例外)。
- オペレーターID: ドローンに登録済みのオペレーターIDを明示するラベルを貼付すること。
- 地理的制限の確認: 飛行前に制限区域や危険区域を確認する(例: ドローンマップを使用)。
- 自然保護区・国立公園: 飛行や離着陸が禁止されている場合がある。郡管理委員会の許可が必要な場合あり。
- ライトの使用: 暗闇での飛行時には、明確に視認可能な緑色の点滅ライトを使用する。
特定の場所での飛行ルール
- 空港周辺: 管制空域内での飛行には航空交通管制の許可が必要。
- ヘリポート付近: ヘリポートから1km以内での飛行は、事前に管理者の許可を取得すること。
- 道路上: 道路横断は許可されるが、道路上でのホバリングは禁止。車両が走行中の場合は飛行禁止。
- 自然保護区・国立公園: 飛行許可を得る必要があり、写真や映像の配信には追加許可が必要。
特殊状況における注意事項
- 危険区域での飛行
-地上および上空で危険が生じる可能性がある区域での飛行は、必要に応じてNOTAMやAIP情報を確認する。 - 移動中の車両からの飛行
-ボートや車両からの飛行は可能。ただし、運転中は操作してはならない。 - FPVモードでの飛行
-一人称視点(FPV)モードで飛行する場合、ドローンを直接目視で監視する補助者が必要。
参考:ドローン飛行ガイド
オープンカテゴリの概要

スウェーデンでは、EASAのルールに準拠しています。
オープンカテゴリの概要は以下の通りです。
サブカテゴリ (Cクラス) | 該当スペック | 飛行ルール | 試験・講習要件 |
A1 (C0) | 最大重量250g未満 | – 人混みの上を短時間飛行可能- 無関係な人の上空での飛行は最小限にする | ユーザーマニュアルの 理解 |
A1 (C1) | – 最大重量900g未満 – 衝突エネルギー80J未満 | A1/A3試験に 合格 | |
A2 (C2) | – 最大重量4kg未満- 操縦者による低速モード(3m/s)の設定可能 | – 無関係な人から30m以上離れて飛行- 低速モード使用時は5mまで接近可能 – 1:1ルール | – A2の理論試験に合格 – A1/A3試験の合格が前提 |
A3 (C3) | – 最大重量25kg未満 – 最大寸法3m未満 | – 住宅地や産業地から150m以上離れて飛行- 無関係な人々がいないエリアでの飛行 | A1/A3試験に合格 |
A3 (C4) | 自動機能が少ない シンプルな設計 |
クラスマーク(Cマーク)とは
クラスマーク(Cマーク)は、ドローンの性能や安全基準に基づき、EU規則に従って割り当てられる分類ラベルです。
スウェーデンを含むEU加盟国で、ドローンの適切な利用条件を示すために使用されます。
Cマークにより、ドローンの最大重量や運用可能な飛行カテゴリー(A1、A2、A3)が明確に規定されているため、ユーザーは規制遵守を簡単に確認できます。
2024年以降、市場で販売される新しいドローンは、CマークおよびEU適合宣言が必要です。
スウェーデンのライセンス試験概要
スウェーデンでは、ドローン操縦者が飛行リスクに応じた試験に合格する必要があります。
試験はEU共通規制に基づき、オープンカテゴリー(A1/A3、A2)および特定カテゴリーで異なる要件があります。
・試験の種類と費用(※2025年1月時点)
カテゴリ | 内容 | 費用(SEK) |
A1/A3 | オンライン理論試験と証明書発行 | 600 (約8,400円) |
A2 | 理論試験およびリモートパイロット資格 | 850 (約12,000円) |
A2(A1/A3取得済みの場合) | 理論試験およびリモートパイロット資格 | 600 (約8,400円) |
再試験(全カテゴリ) | 理論試験の再受験 | 600 (約8,400円) |
ライセンスの更新 | 既存資格の更新 | 550 (約7,700円) |
・試験プロセス
- 準備と登録
-公式ウェブサイトを通じて、オンライン試験の受験登録を行う
-試験料は事前に支払う - 試験内容
-ドローンの基本操作、安全基準、距離ルールなどを含む理論試験
-試験はスウェーデン語で実施 - 合格基準
-正答率が75%以上で合格となり、操縦資格が付与される
-再試験は必要に応じて実施可能 - 証明書の発行
-合格者にはデジタル形式のドローンカード(ライセンス)が発行される
-有効期間は5年間
・試験の注意点
試験はスウェーデン語のみで提供されており、中断またはキャンセルされた場合は返金されません。
試験はオンラインで行われるため、以下の接続環境が推奨されています。
・Windows 10以上、またはmacOS 11.0以上
・最新バージョンのGoogle Chrome、Firefox、またはSafari
・最低4GB、推奨8GB以上
・最低10 Mbps以上のダウンロード速度
・内蔵または外付けのWebカメラ(試験中の監視用)
・動作確認済みのマイク(試験官とのコミュニケーション用)
・試験を受けるための条件
- 年齢制限:18歳以上(場合によっては12歳以上)
- 登録要件:オペレーター登録必須
- 必要書類:個人ID(電子識別)および支払い確認書
- 訓練:指定されたトレーニングプログラムを完了した証明
・ライセンス更新・維持の要件
- 更新費用: 550 SEK(約7,700円)
- 更新頻度: 5年ごと
参考:理論テストと能力証明書
日本人はスウェーデンでドローン飛行できるの?

日本人がスウェーデンでドローンを操縦する場合、EU共通の規則に基づいた手続きが必要になります。
基本的には、スウェーデン国民と同様です。
- オペレーター登録
-スウェーデン運輸庁(Transportstyrelsen)のウェブサイトで登録
-登録料 - リモートパイロットの資格取得
-操縦するドローンのサブカテゴリー(A1/A2/A3)に応じたオンライン試験に合格-試験費用
-スウェーデン語で行われるため、言語サポートが必要な場合あり - 必要な書類
-パスポートまたはEU居住許可証(IDとして)
-スウェーデン運輸庁のオペレーター登録証明
-ドローンカード(リモートパイロット資格証明書) - ドローンの登録
-重量250g以上のドローンまたはカメラ付きドローンは登録が必須
-機体にオペレーターIDを貼付 - 保険加入
-任意保険の加入を推奨(特に商業利用の場合は義務化される可能性あり) - 地理的制限区域の確認
-ドローンマップ(Drönarkartan)で飛行予定地域の制限区域や危険区域を確認
ドローンがEU/EEA以外で購入された場合、スウェーデンの規制に準拠しているか確認が必要です。
また、試験がスウェーデン語で行われるため、必要に応じて翻訳サポートを用意しましょう。
参考:スウェーデン運輸庁(Transportstyrelsen)
EASAドローン規制概要
日本からスウェーデンにドローンを持ち込む際の注意点
日本からスウェーデンにドローンを持ち込む際は、リチウム電池に注意が必要です。
利用する航空会社によって持ち込み規定が異なるため、事前に確認しておきましょう。
以下は、フィンエアーのリチウム電池に関する持ち込み規定です。
ワット数(Wh) | 輸送可能な個数 | 持ち込み形式 | 備考 |
100Wh以下 | 制限なし | 機内持ち込み、受託手荷物可能 | 個人利用目的で、電池が機器に装着されている場合に限る |
101~160Wh以下 | 機内持ち込みは 2個まで | 機内持ち込みのみ 可能 | フィンエアーの事前承認が必要 |
161Wh以上 | 不可 | 不可 | 機内持ち込み、受託手荷物ともに輸送不可 |
リチウム電池は適切に梱包し、短絡を防ぐため端子を絶縁する必要があります。
スマートバッグを受託手荷物として輸送する場合、リチウム電池を事前に取り外さなくてはなりません。
また、破損またはリコール対象安全基準を満たさないリチウム電池は輸送不可です。
参考:フィンエアーの一般品目に対する制約
スウェーデンのドローン法に違反した際の罰則

スウェーデンにおいて、違反したドローン飛行を行った場合、以下の罰則が科される可能性があります。
違反 | 罰則例 |
無許可エリアでの飛行 | 罰金刑、またはドローン没収。重大な場合は操縦禁止処分。 |
プライバシーの侵害 | プライバシー保護法に基づき、罰金や損害賠償請求の対象となる。違反の程度により金額は変動。 |
未登録ドローンの飛行 | 罰金刑や登録の強制。 |
安全基準の違反 | 罰金刑、危険性が高い場合はドローンの没収や操縦資格の停止、懲役刑が科される可能性あり。 |
危険区域・制限区域での飛行 | ドローンの没収、操縦資格の永久停止。場合により追加監視料金が発生。重大な場合は裁判所命令による懲役刑の可能性。 |
継続的または危険な違反行為 | ドローン操作の永久禁止、罰金および追加監視料金。裁判所による重い刑罰が科されることも。 |
参考:Transportstyrelsen ドローン規制
EASA ドローン規制
スウェーデン刑法(Brottsbalken)
まとめ

この記事では、スウェーデンのドローン規制について解説しました。
スウェーデンのドローン規制は、安全性とプライバシー保護を優先しつつ、EU基準をベースに透明性が高く、環境保護や安全性に特化した「バランスの取れた規制」が特徴と言えます。
現地のルールを遵守し、素敵なドローン飛行を満喫しましょう。
ところで、「おしんドローンスクール」ではドローンの国家資格が取得できることをご存じですか?
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