今回はドローンを飛ばす上で非常に重要な、「航空法でドローンが飛行禁止となっている空域」について、具体例を挙げながら解説します。
国家資格の学科試験にもよく出る項目ですので、「航空法でドローンが飛行禁止となっている空域を4つ挙げなさい。」と言われてすぐに出てこない方は、ぜひこのページを読んで復習してみてくださいね!
内容は、学科の教科書である国土交通省の「教則(第3版)」の第3章(p7~)に該当しますよ。
なにかと難しい単語が多い「教則」を、できるだけやさしい言葉で解説します!
参考:無人航空機の飛行の安全に関する教則 (第3版)
https://www.mlit.go.jp/common/001602108.pdf
目次
ドローン飛行禁止空域4つ
①人口集中地区(DID)
②地表から150m以上
③空港等の周辺
③-1 「空港 “等” の周辺」の “等” とは?
③-2 「空港等の ”周辺” 」の “周辺” とは?
④緊急用務空域
まとめ
ドローン飛行禁止空域4つ
「無人航空機」(と、国土交通省の「教則」には書かれています。さっそく難しい言葉が出てきましたね。つまりドローンのことです。)には、「航空法」という法律で次のように決められています。
簡単に言うと、「飛行機や周囲の人の安全が優先!原則としてドローン飛行禁止の場所がある」という意味です。
そして「原則として禁止」という思わせぶりな表現は、実は「許可を得ることで飛行が可能になる空域」とも言えます。
国家資格の取得は、その手助けとなりますよ!
航空法で原則としてドローン飛行禁止の場所は、次の4つです。
①人口集中地区(DID)
②地表から150m以上
③空港等の周辺
④緊急用務空域
それでは、ひとつずつ解説していきましょう。
①人口集中地区(DID)
ひとつめは、人口集中地区(DID)について解説します。
「DID」の読み方は「ディー アイ ディー」です。通ぶって「ディドゥ」などと読まないよう気を付けましょう。
※Densely Inhabited Districtの略ですが、そこまでは覚えなくて大丈夫です。
人口集中地区(DID)とは読んで字のごとく、人が集まる地区つまり都会のことです。簡単に言うと、「通行人が多い地区はドローン禁止」という法律です。
人口集中地区(DID)は5年ごとに行われる国勢調査をもとに設定されます。令和6年現在は、令和2年の国勢調査の結果が適用されています。
※学科試験対策としては、「DIDは毎年更新ではなく5年ごとの更新。現在は令和2年が適用されている」ということを覚えておきましょう。
まさか通行人をさえぎって何の遠慮もなくドローンを飛ばそうとするマナーのない人はいないと思いますが、マナー以前に法律で飛行が禁止されているのが人口集中地区(DID)です。
たとえ人が少ない場所であっても、近くに繁華街があると人口集中地区(DID)となる場合があります。思い込みで判断するのは避けましょう。「近所の河川敷はノビノビできてドローンで遊ぶには最適だと思ったが、実は人口集中地区(DID)だった」ということが起こると大変です。
学科試験には出題されませんが、次回の国勢調査は令和7年(2025年)10月です。日本のどこかには、この5年間に発展したことで新たに人口集中地区(DID)に仲間入りをする地区もあることでしょう。
人口集中地区(DID)は国土地理院のHPから誰でも無料で調べることができます。気になる地区は 地理院地図 / GSI Maps|国土地理院 からチェックしてみましょう。
参考:地理院地図 / GSI Maps|国土地理院
https://maps.gsi.go.jp/#5/36.104611/140.084556/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
②地表から150m以上
次は飛行機との関係について解説します。
簡単に言うと、「地表から150m以上の空は飛行機やヘリコプターの領域なのでドローン禁止」という法律です。
自分が飛行機に乗っているところを想像してみてください。ふと窓の外を見るとドローンがプルプルと飛んでいて、あやうく飛行機のエンジンに吸い込まれそうにでもなっていたら、たまったもんじゃないですよね。そういうことです。
学科試験対策としては、「地表(または水面)から150m」を覚えましょう。
ポイントは「海抜150m」や「標高150m」ではないことです。もしも海抜150mや標高150mだったら、長野県のような標高の高い県はどこも飛ばせないことになってしまいます。
※おまけ
学科試験では何mかを問う問題も出やすいので、数字はしっかり覚えましょう。
例:「小型無人機等飛行禁止法」の中の「重要施設の周囲300m」「模型航空機も規制対象なのは高度250m」などです。その他「罰金30万円」「申請拒否から1年」など、何かと数字が出てきます。
出題者の気持ちになると、数字って問題を作りやすいのでしょうね。学生時代のテストも、よく年号や数字を覚えましたね。
③空港等の周辺
次も飛行機に関する法律です。
簡単に言うと、「空港等の周辺はドローン禁止」という法律です。
もはや「そりゃあそうでしょうね!」と言いたくなります。
間違っても空港の展望デッキにいるカメラマンたちに並んで「自分はドローンを使ってもっと迫力ある映像を撮るぞ!」などと考えてはいけません。
さて、問題はここからです。
なぜ「空港はドローン禁止」という表現ではなく、「空港“等の周辺”はドローン禁止」なのかについて解説します。
③-1 「空港 “等” の周辺」の “等” とは?
この “等” はズバリ、ヘリポートなどを指します。
ヘリポートはどこにあるかというと、ドクターヘリや救助用のヘリが離着陸する病院や公共施設の屋上などにあります。ドローンを飛ばしたい場所が空港から離れていたとしても、近くにヘリポートがある可能性があるため、飛行の際は必ず確認するようにしましょう。
国土地理院のHPでは誰でも無料で空港とヘリポートの位置をまとめてチェックできるので、ぜひ活用しましょう!
例として 地理院地図 / GSI Maps|国土地理院 で横浜近郊のヘリポート を調べてみました。
余談ですが、将来的にはドローンや空飛ぶ車専用のヘリポートとして「Vポート」というものが一般的になる日がくるかもしれません。
VとはVertical=垂直 滑走路を必要とせず垂直に離陸ができるドローンの特徴を指します。
③-2 「空港等の ”周辺” 」の “周辺” とは?
突然ですが、筆者の故郷は九州の長崎県です。
DIDのディの字もなく、サルの出没情報が町内放送で呼びかけられるような、のどかなところです。「帰省したら思いっきりドローンを飛ばしまくって遊ぼう!」と考えていました。
しかし念のため飛行禁止空域ではないか調べたところ、なんとこの「空港等の“周辺”」に含まれる地域でした。
「教則」の言葉を借りて正確に言うと、「政令空港」の「外側水平表面」になります。
下のように、「教則」p12にもしっかりと書かれています。
羽田空港や成田空港に並んで、健気にも長崎空港は航空機が頻繁に離着陸する政令空港として設定されているではありませんか。
ちなみに、上の地図でみどりの円が三角に切れている地域は、長崎市街地です。旅行に行ったことがある方もいますか?
このあたりは飛行機ですら航行を避けていることがわかります。DIDのためドローンも禁止です。
ではみどりの円の左上あたりはどうでしょうか。
このあたりは佐世保市街地で、やはりDIDです。さらに海上自衛隊佐世保基地があるため、「小型無人機等飛行禁止法」という、小さなトイドローンですら飛行禁止になる別の法律があります。
おまけとして、地図には佐賀空港と熊本空港も記載しています。
佐賀空港は政令空港ではないので、飛行禁止の空域はとても狭いですね。
佐賀県民の方は便数が多い福岡空港を使うのでしょうか。
空は広いようで狭いですね。
皆さんも普段よく使う空港を調べてみると、空港等の”周辺”の規制を実感できるかと思います。
国土地理院のHPでは、誰でも無料で空港周辺の制限を調べることができます。
筆者は今回 地理院地図 / GSI Maps|国土地理院で長崎空港を調べてみましたよ!
さらに便利なシステムも紹介します。
「○○空港 高さ制限」で検索すると、空港ごとにわかりやすく高さの制限を解説してくれている「高さ制限回答システム」がある場合もあります。
ぜひ活用しましょう!
参考:長崎空港高さ制限回答システム
https://secure.kix-ap.ne.jp/nagasaki-airport
④緊急用務空域
最後は「緊急用務空域」について解説します。
字面からなにやらただごとではない雰囲気が伝わってきますね。
簡単に言うと、「災害時はドローン禁止」という法律です。
緊急用務空域は災害時にヘリなどが救助活動(=緊急用務)を安全に行うために国土交通省が定めます。
この緊急用務空域の存在を知ったのは2024年1月1日に起きた能登半島地震の時だという方も多いのではないでしょうか。
調べたところ、2016年の熊本地震や、2018年の西日本豪雨でも指定されていたようです。
ドローンが普及してきた今、被災地のニュースを見て「ドローンで現場の様子を撮影して伝えたい。」と使命感を抱いた方もいるかもしれません。
しかしその使命感が裏目に出て、命がけで救助活動を行うヘリを邪魔しては大変ですので、緊急用務空域ではドローンを飛ばさないよう、厳守しましょう。
最近は救助ヘリだけでなく、国から正式に依頼を受けた高度な技術を持つプロのドローンパイロットが支援に向かうことがあります。
たとえ国家資格を持っていても、たとえその地域で飛行の許可承認を得ていたとしても、それだけでは緊急用務空域でドローンを飛ばすことはできませんので、気を付けてください。
緊急用務空域は、地震以外に がけ崩れ・なだれ・山火事などの災害時にも指定されることがあります。
事前に予期することは不可能なため、ドローンを飛ばす前には必ず国土交通省のHPで確認するようにしましょう。
※学科試験対策としては、「国土交通省が指定する」というところを覚えましょう。なんとなく助けに来てくれそうな警察や消防、自衛隊を想像してしまいますが、指定するのは国土交通省です。警察庁や防衛省ではありません。
まとめ
以上、「航空法でドローンが飛行禁止となっている空域」4つについての解説でした。
まとめると、以下のようになります。
①人口集中地区(DID)
=通行人が多い地区はドローン禁止
②地表から150m以上の空域
=地表から150m以上の空は飛行機やヘリコプターの領域なのでドローン禁止
③空港等の周辺
=空港等の周辺はドローン禁止
④緊急用務空域
=災害時はドローン禁止
「教則」は難解な言い回しが多く頭に入ってこない方も多いと思いますが、ひとつひとつ具体例を考えてみると理解できますよ。ここまで読み進められたのであればもう大丈夫。
「DID、150m、空港、緊急……」とブツブツつぶやいていればなんとか覚えられそうですね!?
また、ドローンの飛行禁止項目については今回の「規制対象となる飛行の “空域” 」以外に、「規制対象となる飛行の “方法” 」という規制も6つあります。
さらに文中でもたびたび出てきた「小型無人機等飛行禁止法」という法律もあります。
小型無人機等飛行禁止法は、例えば「国会議事堂周辺を飛ばしたら警察官に捕まるぞ!」といった内容です。
気になる方は国土交通省の「教則(第3版)」を読んでみてくださいね!
ところで、「おしんドローンスクール」ではドローンの国家資格が取得できることをご存じですか?
おしんドローンスクールで国家資格講習を学ぶ「4つのメリット」
メリット1:初心者でも安心して受けられる
おしんドローンスクールの国家資格講習は、ドローン操縦の基礎から実践まで、プロの講師が丁寧に指導します。少人数制で、一人ひとりのレベルに合わせて学習できるので、初心者でも安心して受け
られます。
メリット2:最短二日でドローン国家資格が取得できる
最短一泊二日でドローンの国家資格を取得することができます。忙しい方でも、短期間で資格取得を目指せます。
メリット3:e-Learningで忙しい方もスマホで簡単に学習可能
おしんドローンスクールの学科講習はe-Learningで完結します。パソコンやスマホで受講できるので、忙しい方でもスキマ時間に学習できます。
メリット4:屋外で広々と練習することができる
空撮体験など屋外で広々と練習することができます。屋外で練習することで、実践的なスキルを身につけることができます。自然豊かな場所の利点を活かした講習が可能です。