空飛ぶ避雷針:ドローンによる次世代雷対策の可能性

知る得ドローン
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気象災害の激甚化が進む中、日本の夏に頻発する落雷は、依然として重大な自然リスクの一つです。通信・電力・交通などのインフラに深刻な被害を及ぼし、人的事故にもつながるこの現象に対し、より柔軟で能動的な対策が求められています。

その解決策として今注目されているのが、NTTが開発を進める「空飛ぶ避雷針」――ドローンによる雷誘導技術です。これは従来の固定型避雷針の限界を補い、雷を“コントロールする”ことを目指した革新的な取り組みです。この記事では、2024年12月の実証実験をはじめとする最新の研究成果と、今後の課題・展望について詳しく紹介します。

1. 日本における雷被害と避雷の課題

日本では、年間平均で約20人が落雷により直接的な被害を受けており、世界平均で被害者の約30%が死亡していると報告されています。特に、通信・放送、送電網、鉄道信号などの社会インフラに与える影響は大きく、同時に人的リスクも無視できません。

労働災害の観点から見ると、平成3年から29年までの間に、落雷による死亡災害は14件発生しており、年間では0~3件の災害が報告されています。これらの災害は、主に屋外での作業中に発生しており、建設業や接客娯楽業などで多く見られます 。

また、日本国内の年間雷被害総額は、1000億円から2000億円と推定されています。これには、落雷による工場の機械故障だけでなく、操業停止などの二次災害も含まれています 。

特に、日本海側の地域では「冬季雷」と呼ばれる冬型の気圧配置時に多く見られる雷が発生し、年間を通して雷のある地域で多く、冬でも落雷による災害が多く発生しています。

このように、雷による人的・経済的被害は依然として深刻であり、従来の固定型避雷針では対応が難しい場面も増えています。特に、広い屋外イベント会場や一時的な施設、グラウンドなどでは、固定型の避雷手段に依存することの限界が顕著に現れています。こうした背景のもと、NTTが進める「移動型避雷」への挑戦は、その構想自体が極めて現代的な災害対応モデルといえます。

2. NTTの雷誘導ドローンの技術概要

NTTは、ドローンに「雷を受ける機能」を持たせることで、雷を意図的に誘導し、被害を回避するという新たなコンセプトを提案しています。2024年12月に島根県浜田市で行われた実証実験では、耐雷ケージを装備したドローンを雷雲下に飛行させ、誘雷に成功しました。

このドローンは、アルミニウム製の導電構造を持ち、地上から伸ばしたワイヤに大電流を流すことで、周囲の電界を変化させ、雷の通り道を人工的に作り出します。電界の変化をリアルタイムで測定する「フィールドミル」により、雷の発生が見込まれるタイミングを高精度に捉え、ドローンを最適な高度(約300m)に送り出します。

実験では、雷が実際にドローンのケージ部に落雷し、破裂音や発光を伴いながらも飛行は継続されました。これは雷を安全に受け止める装置として、ドローンが機能したことを意味しています。

3. 実証実験の内容と成果

この実験は、世界的に見ても画期的なものでした。これまで誘雷の研究は、ロケットにワイヤをつけて雷雲へ打ち込む形式が主流でしたが、ドローンのような小型かつ高機動なプラットフォームでの成功は初と見られます。

NTTによると、誘雷時にはワイヤの一部が溶断したものの、ドローン本体は飛行を継続できたとのことです。また、落雷後のデータ解析により、誘雷の発生タイミングとドローンの電界分布の変化が密接に連動していることが確認されました。

さらに、この技術は地上の避雷針ではカバーできない高度領域(夏季雷雲は2000m以上)への対応も視野に入れており、将来的にはより高高度まで飛行可能なドローンの開発も想定されています。

4. 技術的・社会的課題

実用化には複数の課題が残されています。

  • 高高度飛行性能:夏季雷雲に対応するには2000m超の飛行能力が必要です。耐雷構造との両立が求められます。
  • 飛行安全性と制御系:落雷を受けながらも制御を維持する高度なフライトコントローラーが必要です。
  • 誘雷の予測精度:フィールドミルによる観測精度の向上、気象庁とのデータ連携が鍵となります。
  • 制度・運用体制:意図的に雷を落とす行為への法的整備、周辺安全確保、責任の明確化も不可欠です。

現在、NTTは2030年の実用化を目指しており、雷多発地域である金沢市や宇都宮市と連携して、夏季の実証フィールドの確保を進めています。

5. 海外研究との比較と日本の先進性

米国では、フロリダ工科大学やニューメキシコ工科大学が長年にわたりロケット誘雷の研究を続けてきました。これは雷の発生を人為的に引き起こすことで雷の性質を解析する研究です。

一方、NTTのドローン方式はより機動性に富み、災害現場やイベント会場など、柔軟な運用が可能な点で大きく異なります。安全性を確保しつつ、高度な誘雷制御を実現できれば、世界的にも新しい避雷システムのモデルとなる可能性があります。

まとめ

NTTが開発を進める「空飛ぶ避雷針」技術は、従来の受動的な雷対策から、能動的に雷を制御するという発想への転換を象徴する取り組みです。2024年の実証実験では技術的実現可能性が確認され、今後は高高度対応、制度整備、安全性の検証が課題となります。

気象災害がますます激しくなる現代において、「雷を回避する」から「雷を受ける場所を選ぶ」時代へとシフトすることは、防災インフラの次なる一歩と言えるでしょう。NTTの挑戦が、世界の雷対策に新しい方向性を示すことを期待したいと思います。

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