イギリスは、元々ドローン規制に寛容でしたが、2020年1月1日にEASAに加盟してから厳しくなりました。
2020年1月31日、イギリスはEU(欧州連合)から脱退したため、今はCAA(英国民間航空局)が独自のルールで管理、運用しています。
この記事では、イギリスにおけるレクリエーション飛行の現行ルールについて解説しています。
最後まで読むことで、現在のイギリスの飛行禁止ルールやオープンカテゴリの概要、罰則などを把握できるでしょう。
これからイギリスでドローン飛行を考えている方は、是非、読んでみて下さい。
目次
1. イギリスのドローン概要
①イギリスは2つのIDが必要
2. イギリスのオープンカテゴリについて
①オープンカテゴリ共通で禁止されているルール
②イギリスのオープンカテゴリ概要表
③オープンカテゴリの試験
④保険の加入義務
3. 日本人はイギリスでドローンを飛ばせる?
①日本からイギリスへのドローン持ち込みについて
4. イギリスの違反ドローン飛行に対する罰則
まとめ
1. イギリスのドローン制度
イギリスは、かつてEUに加盟しており、EASAのルールに基づいていました。
EUを脱退した現在は、EASAのルールを残しつつCAA(英国民間航空局)によって管理されています。
ドローンの分類や操縦者およびフライヤーIDの取得など、CAAの規則に基づいている点に注意が必要です。
ただ、2026年1月以降はEASAと同様のドローン規制が施行される可能性があるため、常に動向を把握しておくと安心でしょう。
なお、EASA加盟時に取得したライセンスやIDは、現行の法律の下で有効です。
参考:https://aerc.jp/article.php/20201124102912994
①イギリスは2つのIDが必要
イギリスで250g以上のドローン飛行を行うためには、フライヤーIDとオペレーターIDが必要です。
フライヤーIDとは
フライヤーIDは、他国のライセンスに該当します。以下のポイントでその概要を説明します。
- 必要な条件:
- 250g以上のドローン飛行を行う際に必要
- 試験やトレーニングなどの取得要件を満たさなければならない
- 年齢制限:
- オープンカテゴリは年齢制限なし
- 13歳未満の子どもは、オンラインテスト時に保護者が同伴する必要あり
- 取得費用:
- A1 / A3は無料、A2は100~250£必要
- A1 / A3は無料、A2は100~250£必要
- 有効期限:
- 5年間
このフライヤーIDを取得することで、ドローン飛行が合法的かつ安全に行えるようになります。
参考:https://www.caa.co.uk/drones/drone-code/getting-a-flyer-id-before-you-fly-points-26-to-28/
オペレーターID
オペレーターIDは、以下の内容に基づき、ドローンの所有者および操縦者はIDの取得が義務付けられています。
- 対象ドローン:
- 250g以上のドローン
- 250g以下でカメラが搭載されたドローン
- 取得可能な年齢:
- 18歳以上は直接取得可能
- 18歳未満の子どもは、保護者がオペレーターIDを取得し、その管理下でのみ操縦可能
- 申請方法:
- CAAのウェブサイトからオンラインで申請
- CAAのウェブサイトからオンラインで申請
- ID番号の貼付場所:
- 取得したID番号は、ドローン本体の見えやすい位置に貼り付ける必要あり
- 取得したID番号は、ドローン本体の見えやすい位置に貼り付ける必要あり
- 申請料:
- 11.13ポンド(約1年間有効)
- 11.13ポンド(約1年間有効)
- 登録に必要なもの:
- 有効なメールアドレス
- デビットカードまたはクレジットカード
- 第三者賠償責任保険の証明書
- 更新:
- オペレーターIDは1年ごとに更新が必要
- オペレーターIDは1年ごとに更新が必要
これらの手続きを通じて、ドローンの安全な運用が確保されます。
参考:https://www.caa.co.uk/drones/drone-code/getting-an-operator-id-before-you-fly-points-29-to-34/
2. イギリスのオープンカテゴリについて
CAAが定義しているカテゴリは「Open(オープン)」「Specific(特別)」「Certified(認可)」の3つです。
オープンカテゴリはA1 / A2 / A3のみで、EASAにおけるサブカテゴリがありません。
ここでは、現行のオープンカテゴリの飛行ルールや概要を解説します。
①オープンカテゴリ共通で禁止されているルール
飛行高度に関する規定
- 120m(400ft)以上禁止
プライバシー・法的規制
- プライバシーの侵害禁止
無断でSNSやYouTubeにアップするなど、GDPR(一般データ保護規則)に反する行為は禁止
飛行方法に関する規定
- 直接目視の維持
- 1人称視点(FPV)の場合、オブザーバーを隣に配置することが必要
- 50m以内で追跡するフォローミーモード時は目視維持のルールが免除
- 1:1ルール
例)他人から水平距離で60m離れた場合、60mで飛行する
危険物の輸送・環境への配慮
- 危険物の輸送禁止
人、財産、環境に危険を及ぼす可能性がある(可燃性、有毒性、腐食性のもの)の輸送、落下は厳禁 - 有人航空機との接触回避
有人航空機を発見した場合、速やかにドローンを着陸させること
飛行制限エリア
- 飛行制限ゾーン(FRZ)
空港や飛行場周辺の飛行制限ゾーンでは許可が必要- FRZの確認はNATS’アプリで可能
- FRZの確認はNATS’アプリで可能
- 政府指定エリアの飛行禁止
- 緊急活動中のエリア
交通事故、火災、捜査などの緊急活動が行われているエリアでの飛行は禁止
天候と健康状態
- 悪天候時の飛行禁止
強風、極寒、雨天、霧などの悪天候時は飛行禁止 - 体調不良時の飛行禁止
アルコール摂取、薬物摂取、体調不良、疲労困憊時の飛行は禁止
操縦時の禁止事項
- 他の活動中の操縦禁止
車や自転車の運転中、電話使用中、または複数のドローンを同時に操縦することは禁止 - 人混みでの飛行禁止
ショッピングエリア、スポーツイベント、混雑したビーチや公園などでの飛行は禁止
事故や事件への対応
- 事故・事件の報告
ドローンによる事故や事件に巻き込まれた、または目撃した場合はCAAに報告すること - 不審機の発見時
不審なドローンを見かけた場合は警察に通報、また私有地に落下した場合は、回収前に所有者の許可を得る
特別な飛行ルール
- 高層建物の空撮
高さ105m以上の建物を空撮する場合、建物の15m以下で50m以内の範囲で飛行 - 危険な施設付近の飛行禁止
クレーンやワイヤーなど、安全が確保できない高い建物付近での飛行は禁止
動物や環境への配慮
- 動物に危害を与える飛行禁止
野生を含む動物に危害を与えるような飛行は禁止 - SSSI(特別科学的関心対象地)
特別科学的関心対象地(SSSI)での飛行は、以下の当局に確認を取ることが必要。
-Natural England / Natural Resources Wales / NatureScot / Northern Ireland Environment Agency (NIEA)
参考:https://register-drones.caa.co.uk/drone-code/the_drone_code.pdf
②イギリスのオープンカテゴリ概要表
2024年11月時点におけるイギリスのオープンカテゴリ概要です。
カテゴリ | 重量範囲 | 飛行要件 | 能力証明 |
---|---|---|---|
(※1)A1 個人製造機 | 250g未満 | 群衆上空の飛行禁止 | ・ユーザーマニュアルの理解 |
A1 | 250~500g未満 | 他人上空の飛行禁止 | ・ユーザーマニュアルの理解 ・オンライントレーニング ・オンラインテスト ・自己実践トレーニング ・A2 CofC 理論テスト |
A2 | 2kg以下 | 他人から水平距離50m以上離れる | ・ユーザーマニュアルの理解 ・オンライントレーニング ・オンラインテスト ・自己実践トレーニング ・A2 CofC 理論テスト |
A3 | 25kg以下 | ・他人から水平距離50m以上離れる ・飛行エリアに他人を入れない ・住宅地、商業地、工業地、レクリエーションエリアから水平距離150m以上離れる | ・ユーザーマニュアルの理解 ・オンライントレーニング ・オンラインテスト |
※1:トイドローンを除くカメラ付きのもの
250g~500g未満のドローンは、A2ライセンスを持っていれば他人からの水平距離50m以内も飛行可能です。
また、ライセンスの有効期間はすべて5年です。
250g未満のドローンについて
250g未満のドローンは、以下の飛行が許可されています。
・他人からの水平距離50m以内および頭上飛行人混みの頭上は不可)
・住宅地、商業地、工業地、レクリエーションエリアから150m以内
参考:https://www.caa.co.uk/publication/download/18223
③オープンカテゴリの試験
A1 / A3のオンラインテスト
イギリスのドローンA1 / A3カテゴリで必要となるフライヤーIDの取得には、CAAの公式オンライン試験を受験する必要があります。
以下に、試験の受験手順を丁寧に説明します。
なお、Drone and Model Aircraft Codeを事前に学習しておくことを推奨します(参考コードはこちら)。
最低年齢
● 年齢無制限:13歳未満は保護者同伴で受験する
必要なもの
- 有効なメールアドレス
- パソコン、スマートフォン、またはタブレット(インターネット接続が必要)
- 受験中に参照可能な資料は「Drone and Model Aircraft Code」
オンライン試験受験の流れ
1: CAAウェブサイトへのアクセス
- CAAの公式ページで試験を受ける登録を行う:
Flyer ID登録ページ
UK Civil Aviation Authority
2: アカウント作成
- ページ右上の「Create an account」または「Sign up」を選択
- 必要事項(名前、メールアドレス、生年月日など)を入力
- メールアドレスに送信される確認リンクをクリックして登録は完了
3: 理論試験を開始
- アカウントにログイン後、「Take the test」を選択
- 試験は全40問の多岐選択式で構成されており、制限時間は90分です。
主に以下の内容が含まれます。- 基本的な航空法規
- 安全飛行に関するルール
- 気象条件やバッテリー管理に関する知識
試験後の手続き
- 合格の場合:
- フライヤー IDが即時発行される。メールで確認可能で、IDは5年間有効です。
- 不合格の場合:
- 何度でも無料で再試験可能
遵守事項
- フライヤーIDを取得した後も、ドローンにはオペレーターID(18歳以上の所有者が取得)を付ける
詳細はこちら
UK Civil Aviation Authority
A2のテスト(A2 CofC 理論テスト)
2020年12月31日に導入されたA2 Certificate of Competency(A2 CofC)は、ドローンを人の近くで安全に飛行させるために必要な資格です。
以下に取得方法や試験の詳細をわかりやすく説明します。
取得方法と必要条件
- トレーニングの受講
- CAA認定のドローントレーニングセンターが提供する座学またはオンライン講座を受講
- 多くのセンターでは模擬試験を無制限で提供
- 理論試験の受験
- トレーニング終了後にオンライン試験を受験
- 試験はリモートで監督官の監視の下に実施
試験の概要
- 問題数: 30問の多岐選択式問題
- 制限時間: 75分
- 合格基準: 75%以上の正答率
- 再試験: トレーニングセンターによって異なるが、多くの場合1年後に再受験可能
試験に必要なもの
- デバイス: デスクトップまたはラップトップ
- ブラウザ: Google Chrome
- 通信環境: 最低2Mbps以上の通信速度
- 機器: Webカメラとマイク
- 身分証明書: 顔写真付き(パスポートなど)
- 身分証がない場合、センターが指定する代替試験を受ける必要あり
資格取得の目安
- トレーニングコースと試験を合わせて約48時間以内
費用
- トレーニングと試験の費用はセンターによって異なり、相場は100~250£程度
A2 CofCは、都市部や建物の近くでの商業利用や趣味のドローン飛行を計画する人にとって、非常に重要な資格です。
手続きや試験はオンラインで完結するため、効率的に取得することができます。
参考:https://www.uavhub.com/products/online-a2-cofc-drone-course-a2-certificate-of-competency
④保険の加入義務
イギリスにおける第三者賠償責任保険(ドローン保険)の要件は、以下の通りです。
・20kg未満のドローンは、娯楽目的なら保険加入は任意(加入推奨)
-空撮や報酬を得る、農作業時などはドローン保険に強制加入
・20kg以上であればドローン保険の加入義務が発生
海外で使える代表的なドローン保険は、損保ジャパンと東京海上日動です。
イギリスに渡航する前にドローン保険の加入を検討しましょう。
参考:https://www.caa.co.uk/media/5d1otmqu/the-drone-code-march-2024.pdf
3. 日本人はイギリスでドローンを飛ばせる?
日本人はイギリスでのドローン飛行が可能です。
フライヤーIDとオペレーターIDの取得と、CAAおよび自治体ルールの遵守が求められます。
手続きや登録の流れは、イギリス国民と変わりません。
参考:https://www.caa.co.uk/drones/rules-and-categories-of-drone-flying/introduction-to-drone-flying-and-the-uk-rules/#:~:text=Drone%20and%20model%20aircraft%20requirements,airport’s%20drone%20detection%20safety%20systems.
①イギリスへのドローン持ち込みについて
日本からイギリスへ持ち込む際は、以下の点に注意が必要です。
・空港内ではドローンの電源をオフにする
・ドローンのリチウムバッテリーは手荷物扱いで機内に持ち込む
・航空会社によって持ち込みルールが異なるため、事前確認が必要
以下の表は、JAL(日本航空株式会社)が定めているリチウムバッテリーの機内持ち込みルールです。
バッテリー容量 | 機内持ち込みの可否 | 備考 |
100Wh以下 | 可能 (数量制限なし) | 一般的なドローンバッテリーはこの範囲に収まることが多い |
100Wh~160Wh | 可能 (最大2個まで) | 電子機器と予備分を合わせて2個まで可能 |
160Wh以上 | 預かり、機内持ち込み禁止 | – |
※JALのリチウム電池に関するルール
JALでは、バッテリーに含まれるリチウムが2g以上のものは預かり、持ち込みともにできません。
また、使い捨てタイプはリチウム含有量が2g以下であれば機内持ち込み可能です。
ドローンを持っていく場合は、利用予定の航空会社へ問い合わせましょう。
参考:https://www.caa.co.uk/drones/rules-and-categories-of-drone-flying/introduction-to-drone-flying-and-the-uk-rules/#:~:text=Drone%20and%20model%20aircraft%20requirements,airport’s%20drone%20detection%20safety%20systems.
4. イギリスの違法なドローン飛行に対する罰則
イギリスでドローン規制に違反した場合、以下の罰則が科せられる可能性があります。
高度120mを超える飛行 | 最大2,500£(約48万円)の罰金 |
空港の周囲1km以内の飛行 | 最大2,500£(約48万円)の罰金 |
人や財産に危険をさらす飛行 | 最大5年の懲役、無制限の罰金、または両方 |
直接目視を怠った飛行 | 2,500£(約48万円)の罰金 |
オペレーターID未登録の飛行 | 最大1,000£(約19万円)の罰金 |
警察の指示を無視した飛行 | 100£(約1万9千円)の罰金 |
テロ活動に使用 | 重罪、最も厳しい罰則 |
※2023年9月時点の情報
※レートは2024年11月時点
日本と比較してみると、両国の罰則は比較的似ている部分もありますが、イギリスの方が罰則が厳しい傾向があります。
特に 空港周辺の飛行禁止区域の拡大 や テロ活動に対する厳罰化 などがあり、また 懲役刑 に関しても 終身刑 の可能性があるため、イギリスの方がより厳しい法的措置がとられています。
参考:https://www.gardner-leader.co.uk/insights/latest-articles/drone-wars-the-criminal-law-changes-to-meet-the-current-threat/#:~:text=Currently%2C%20it%20is%20against%20the,illegal%20drugs%20to%20several%20prisons.
まとめ
この記事では、イギリスのドローン規制について解説しました。
イギリスはEUから脱退したため、現在はCAAによる独自のルールが設けられています。
しかし、2026年1月以降はEASAのドローン規制を採用するとされており、現行の法制度が大きく変わる可能性が考えられます。
イギリスでドローン飛行を行う際は、事前に現地の最新情報を把握しておくといいでしょう。
ところで、「おしんドローンスクール」ではドローンの国家資格が取得できることをご存じですか?
おしんドローンスクールで国家資格講習を学ぶ「4つのメリット」
メリット1:初心者でも安心して受けられる
おしんドローンスクールの国家資格講習は、ドローン操縦の基礎から実践まで、プロの講師が丁寧に指導します。少人数制で、一人ひとりのレベルに合わせて学習できるので、初心者でも安心して受け
られます。
メリット2:最短二日でドローン国家資格が取得できる
最短一泊二日でドローンの国家資格を取得することができます。忙しい方でも、短期間で資格取得を目指せます。
メリット3:e-Learningで忙しい方もスマホで簡単に学習可能
おしんドローンスクールの学科講習はe-Learningで完結します。パソコンやスマホで受講できるので、忙しい方でもスキマ時間に学習できます。
メリット4:屋外で広々と練習することができる
空撮体験など屋外で広々と練習することができます。屋外で練習することで、実践的なスキルを身につけることができます。自然豊かな場所の利点を活かした講習が可能です。